新型コロナウイルス感染症の影響で観光客が激減し、宿泊施設は大きな痛手を受けている。国頭村のYANBARU HOSTEL(ヤンバルホステル)を運営する「ARCHITECTS&BOTANICAL(アーキテクツアンドボタニカル)」は、「脱観光業」をテーマにホステルの住居化やオフィス化、テナント化に取り組んでいる。ホステルを核とした新規ブランドの展開も積極的に進めている。これまでの取り組みや今後の展望について、小山健一郎CEO(34)に聞いた。(聞き手・沖田有吾)
■廃業ホテルを買い取って
Q:オープンは。
A:廃業していたホテルを買い取って、2019年6月1日にオープンした。
Q:コロナ禍で経営状況は。
A:前年は超えていて、問題なく行っている。オープン前から企画方のホステルで、宿泊施設であっても、世界的に宿泊施設の内容が月々イベントやっているとかバーあるとかカフェやっているとかそれくらいだけど、人が育つ場所を掲げて、教育をテーマにしながらイベントを打っている。割と学生がけっこう来る。皆さん口をそろえて言うのは、こんな空間が沖縄にない。新鮮でクリエイティブな発想になれるので来てくれている。6月は前年比120%、7月は110%とかなり上々だった。8月の県内自粛は厳しかったが、それが解けて予約は一気に増えている。新しいブランドに力を入れていたので宿泊にはあまり力入れていない。
Q:価格帯は。
A:ドミトリーが3~4千円。個室が4人部屋で1万5千円~1万8千円。2人部屋で9千~1万2千円。明確にターゲット層を絞っている。

■ホステル内に「学生カフェ」
Q:6月に脱観光業というテーマを打ち出した。
A:コロナが本格化する前の2月から、マンスリー企画を打ち出した。元々旅行者に頼らないために住居化を掲げていた。月3万円でドミトリーに泊まれるプランを2月にリリースして、そこから移住者が来て村内で就職するなどの動きがあった。自分発明企画と題して、都会での生活に疲れた人や今後どういうチャレンジしていくか定かではない人、迷っている人だけ3万円で宿泊できる最初の段階で30カ月分くらいの予約が入り、10人前後がずっと泊まっている。移住者は2人誕生している。今後は人生を提供していく場所にしたい。
A:教育や育成というテーマの企画もやっていきたい。働くという部分でも、コロナの影響で学生から話聞いてもらいたいという声が集まって、無料相談所みたいにライングループが勝手にできた。県内の大学生が、社会に出る前にもうワンクッション必要だと考えている。大学出てすぐに社会に出てバリバリやるのではなく、経営などを体験してもらいたい。なのでホステル内で学生が経営する学生カフェを新たに立ち上げる。我々が全面サポートしてオペレーションもこちらで整える。デザインとアートとクラフトのコミュニティーをそこから派生して作って、コミュニティーごとに月に1回イベントするとか、そういうものをこれから作っていく。今後はワイン、シャンパンという飲料ブランドを展開する。既にオリジナルビールのLOVE CLASSIC(ラブクラシック)ビールがある。ビールのデザインを大きいパネルにして、その前で愛を伝える場所をホテル内で作る。奥さんとか兄弟とかでもいいから、その場で愛のメッセージを録画して渡す。元々若い子たちが月に100人くらい飲み会で集まるが、その子たちのコミュニティーを形成している。年間何万トンと捨てられている洋服が社会問題になっているが、それを解決するファッションブランドメディアを今作っている。
Q:観光客に頼らないという方針はオープン当初からか。
A:初めは国頭村に今まで来たことのない人という大枠でターゲット層を捉えていた。全国の自然が大好きな人やバックパッカー、休養をゆっくり取りたい人はヤンバルホステルがなくても国頭に来たかもしれないが、ヤンバルホステルがないと国頭に来ない人たちを呼び込めれば村の活性化につなげられると考えた。オープン前、物件を契約する1年前から全国でPRイベントをして、19年6月のオープン当初はそういう皆さんに来てもらえた。
