株式会社 ARCHITECTS&BOTANICAL 代表
小山 健一郎
ホテル事業を通して「地域活性化のシステム」を作ることをミッションに掲げている「YANBARU HOSTEL」。ユニークな発想で、国頭村に新たな価値を見いだす人たちを呼び込んでいる。
地域活性化がコンセプト
約40年続いた老舗ホテルをリノベーションし、2019年6月1日にオープンした「YANBARU HOSTEL」。街に溶けこむように古き良き面影をそのまま活かした外観と、スタイリッシュな内観とのギャップに思わず感嘆の声を上げてしまう。空間デザインなどを手がける代表の小山 健一郎さんは 、「人のいないところにホテルを建てて、人を呼び込むイベントをしかけて国頭村を盛り上げ、さらに沖縄全体を巻き込んでいきたいです。村を盛り上げるというコンセプトを掲げているホテルは世界的にみても珍しいと思います」と、ホテル経営の概念を打破する戦略に自信を覗かせる。
知らない人を振り向かせる
「創造する力が時代を切り拓いてきました。だからクリエイティブな発想は見逃せません」という小山さん。商業施設などのディスプレイやインテリアなど自身が歩んできたクリエイティブの集大成として、空間デザイン・サービス・コミュニティが揃うホテル経営は、いつか実現したい夢だった。奥さんの出身地である国頭村の人口減少や高齢化などの問題を聞き、空間デ ザイナーというキャリアを活 かして地域活性化に貢献するために、ホテルオープンの夢を実現させた。 「やんばるは雑音など余分なものがないだけに、感性が研ぎ澄まされ想像力がかきたてられる場所です。ここで自らの力を磨きたいという世界中のクリエイターを呼び込みたいと思っています」と語る小山さん。やんばるを知らない人を振り向かせるために神奈川・東京・大阪・福岡・名古屋において、ミュージックとクリエイティブをテーマに各地域とコラボして、やんばるを知ってもらうためのプレイベントも開催した。
点で終わらせない
共有スペース中心のホステルは、一般的なホテルに比べて認知度が低いが、小山さんは集客を旅行サイトに頼らず、不況など社会的環境に左右されない工夫や仕掛けづくりに力を入れている。そのひとつが「ドミコミュ(ドミトリーコミュニティー)」だ。ドミュコミュとは、見知らぬ同士6人がひとつのチームとして1週間同じ部屋で過ごし、やんばるをテーマにした写真10点と動画を作成し、計7チームで競い合うという企画 。ドミュ コミュを通じてホステルの認知度を高め、知らない者同士が部屋を共有する楽しさを発見してもらい、地域に人を呼び込むのが狙いだ。イベント参加者から移住者が誕生するなど成果も出始めている。人が集まる仕組みのアイデアは、両手で数え切れないほど温めている。その視線の先に見えるゴールは、点で終わらせず次の世代につなげることだという。「いろいろな人が世界中から集まってくれば、若い人も外に出て行かずにここで刺激を受けることができます」。どんな仕掛けを見せてくれるのか、小山さんの発想から目が離せない。